第1話 何も起きない魔法

スペードの3

「スペーサ様、ご飯のご用意ができました」


いつも通りメイドが呼びに来る。

「ああ、わかった。今行くよ」

そう言ってじぶんの部屋をでて、父が待っている食事場所へ向かう。

「父上、母上おはようございます。」

「おはよう」

テーブルを少し見まわす。

どうやら今日は僕が一番最後のようだ。

この部屋には僕の父でありラジャック王国の現国王、母、

長男の僕(15)。次男のペース(13)、三男のドワン(12)、四男のレイヴン(9)がいる。

食事を食べはじめると父が話を切り出した。

王    「どうだ、お前たち。最近の魔法の調子は」

僕    「まあまあです。」

ベース  「ライトニングを覚えました!」

ドワン  「僕もです!」

レイヴン 「サンダーで精一杯です」

王    「そうか。みんなよく頑張っているな。スペーサはもうちょっと頑張りなさい」

僕    「はい」

ベース  「兄さん、もっと頑張れよ。まだサンダーも覚えていないんだから。

ドワン  「早くしないと、レイヴンにも置いて行かれるぞ」

憂鬱になった僕にさらに追い打ちをかける。

母    「ベース、ドワンいい加減にしなさい」

母は僕をかばってはくれたが、とてもここでご飯を食べる気分ではない。

ごちそうさまでした。と言い残して僕は部屋へ戻った。

部屋へ戻った僕はベッドに寝転んだ。

「はぁーどうしてこうなったんだっけ。」

15年前、僕は確かに日本にいた。確か2020年。

大学でいつも通りに勉強して、家に帰って疲れたから仮眠をして、目が覚めたら赤ちゃんで。

幸い第一王子というとても恵まれた立場で生まれたから何不自由することなく生活することができた。

勉強に関しても日本で勉強していたことはこの世界では次元が違うレベルで進んでいるようなので、そこに関しては僕は天才と呼ばれている。

ただ唯一にして最大の欠点は、この世界は魔法の力がすべてだということだ。

大陸にはいくつもの国があり、魔法によって国同士が領土の奪い合いをしている。

平和な世界ならまだしも、争いが絶えないこの世界では、自分の国を維持するためには何より力が必要なのだ。

それなのに僕は一向に魔法が習得出来ない。この世界に生まれた人だったら必ず身に着けられるレベルの魔法まで。

そんなわけだから弟2人に馬鹿にされ、父には励まされる。

トントン。ドアをたたく音がする。ドアを開けるとそこにはレイヴンがパンをもって立っていた。

「兄さん。ほとんど食べずに出ていったからおなかすいてるだろうと思って。」

そういってレイヴンは僕にパンを渡し、さらに言った。

「あんなこと気にする必要ないよ。兄さんは頭がいいんだから」

僕を励ましてくれた。弟の優しさに感動して、頭をなでながらありがとうと言うと、弟は自分の部屋に戻った。

兄弟の中で、僕と唯一普通に接してくれるレイヴンは僕なんかじゃ比較にならないほど頭がいい。

僕が転生する前の進んだ文明の知識を使っているのに対して、レイヴンは生まれながらの頭の良さでこの世界の文明を一段階引き上げた。

無から有を生み出せる本物の天才だ。そんな弟が僕のことを差別することなく接してくれる。それがどれだけうれしかったか。

レイヴンに励まされて、気を持ち直した僕は持ってきてくれたパンを食べると魔法の訓練を始めた。

僕は今まで全く魔法が使えないと思っていたが、5年前全ての人が固有の魔法を持っているということを知り、それだったら使えるかもしれないと考え、考えうる限りのことを試したところ、一つの魔法を見つけた。

『スペードの3』これが僕の固有魔法。


魔法の名前はわかったのだが効果が一向にわからない。スペードの3について書物を調べると、
めったにない魔法らしく効果が『Reflect(反射)』としか書いていなかった。

このことが僕をより困惑させた。

従者のみんなや弟たちに協力してもらってたくさんの種類の魔法や、物理攻撃をしてもらったがものの見事にすべて貫通する。

魔法を使ったときに唯一変化が感じられたのが、人の上に英数字1文字が浮かぶ。

例えば、ベースはA、ドワンもA、レイヴンはJ.

兄弟はみんな英字なのだが、従者のみんなは数字。王族だけ特別なのかとも思ったが肝心の僕が3。

意味が分からなかったが、数字が大きいほど、魔法の力が強い傾向にあると感じたため、僕には魔法の才はないのだと思い、それから魔法の訓練はしていない。

今日は5年ぶりの魔法の訓練。どうにかして1つでもいいから新しい魔法ができるようになりたい。

数時間後。

やっぱり現実は甘くない。

物語の主人公だったらこんな時に自分の本当の力が目覚めるのに。もう二度と魔法はしない。そう心に決めて部屋へ戻った。

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