第1話 劣等王子

登場人物簡易紹介

フィース :ムーンストーン王国第一王子

セード  :ムーンストーン王国第二王子

サーカ  :ムーンストーン王国第三王子

クッド  :ムーンストーン王国第四王子

第1話 劣等王子

コンコン

メイド  「フィース様、夕食のお時間です。」

フィース 「わかった、すぐ行く。」

そう言ってフィースは部屋を出た。そんなに多くない家族全員がそろった食事。小さい頃は幸せだったこの時間も最近のフィースにとっては違った。

父    「フィース、最近の調子はどうだ。」

フィース 「いつも通りです。父上。」

父    「まぁそうだろうな。セードお前はどうだ?」

『父は冷たい声で僕へ反応をした。そして話を本題の方へ移していった』

セード  「炎の中級魔法が使えるようになりました。まだまだ安定しないけど、練習すれ            ば完璧にできると思います」

父    「そうか、お前はすごいな。サーカはどうだ?」

サーカ  「僕は氷の中級魔法を使えるようになりました。気温ぐらいの温度があるものなら凍らせられます」

父    「おお!もうそこまでできるようになったか。クッドはどうだ?」

クッド  「光の中級魔法を使えるようになりました。」

父    「クッドは光の魔法が使えるのか。全員そのまま励みなさい。」

『ここでいう全員におそらく僕は含まれていない。父が期待しているのは僕たち兄弟ではなく、僕以外の兄弟なのだ。ムーンストーン王国の王である父と長男の僕、次男のセード、三男のサーカ、四男のクッド。四人の子の中で、僕は圧倒的に出来が悪い。年下の弟たちが中級魔法をできるようになっているのに、僕はいまだに一つも中級魔法ができない。小さい頃は僕にも期待してくれていたと思うが、成長して、僕ができないことが増えていくにしたがって、その期待は弟たちに移っていった。それはしょうがない。できない僕が悪いことはわかっている。それでも・・・』

フィースは涙をこぼしそうになったことを悟られないように必死でこらえる。

しかし、傷口に塩を塗るようにセードとサーカは父へ問いかける。

セード  「父上、なんで兄上は僕より3つも年上なのに中級魔法ができないのですか。」

サーカ  「僕はがんばったらできたよ。フィース兄も頑張った方がいいよ。」

父    「そうだな、フィースお前はもっと頑張れ」

フィース 「はい」

フィースは精一杯絞り出した声で返事をする。

ここまで来て、雰囲気を変えるために母が口をはさんだ。

母   「あなたたちそこまでにしましょう。今はご飯の時間よ。セード、サーカあなたたちにもできないことはあるでしょう?人の苦手なことについて、言ってはいけません」

セ・サ 「はーい」

そういわれた弟たちは食事に気を向け始めた。しかし、場を沈めた母の一言でさえもフィースの心に傷を負わせた。民を守ることが王族の務めであるこの世界において、魔法を使えないことは、何か他のことができないのとはわけが違う。王の長男であるフィースにとって、魔法が使えないことはそれ以上ない苦痛なのだ。

だからこそ魔法が使えるようにフィースは必死に努力した。できると思うことはすべてやった。それでも中級魔法にたどりつけなかった。自分のことを慕ってくれる国民のことも守れない。そんな自分になんの価値があるのか。優秀な弟たちがいるのだから自分は必要ないではないか

最近はそんな考えの堂々巡りだった。

だからこそ、今回の夕食の出来事によって、フィースの心に深い傷を負った。

半ば放心状態で夕食を食べ終えたフィースは兄弟から逃げるように部屋に向かった。

部屋で落ち込んでいたフィースにクッドが訪ねてきた。

クッド  「フィース兄様。あんなこと気にする必要ありません。兄様は誰よりも努力をしておられます。いつかきっと一番強くなります」

フィース 「クッド、お前は優しいな。ありがとう。頑張るよ」

フィースはそう言ってクッドの頭をなでた。

クッドは嬉しそうに笑みを浮かべる。

兄を励ましたクッドはいったん部屋から出た。が、ドアを開け、頭だけ出して言った。

クッド   「僕も負けませんからね。」

満面の笑みでそういうと、クッドはドアを閉めた。

『あいつは僕が落ち込んでいるときは必ず励ましてくれる。優しい奴だ。年が一番下なので王位に遠いこともあり、過少評価されているが兄弟で一番優秀なのはあいつだ。あいつの期待に答えるためにももっと頑張らないと。』

クッドに励まされた、フィースはもっと頑張ることを決意した。

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